ファクタリングという言葉を調べると、たいてい「2者間」と「3者間」という分類が出てきます。同じファクタリングなのに、なぜ2つの形があるのか。建設業の現場でどちらを選べばいいのか。気になりますよね。
この2つは、関係する当事者の数だけでなく、売掛先への通知の有無、手数料感、資金化までの時間軸、契約の進め方まで、いろいろな点で違いがあります。だからこそ、雰囲気で選ばずに、自社の事情に当てはめて整理することが大切です。この記事では、2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの違いを、建設業の資金繰り、売掛先への影響、手数料、スピードという観点から、できるだけわかりやすく整理していきます。
- 2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの基本構造
- 売掛先への通知や承諾の扱いの違い
- 手数料感やスピード感の違い
- 建設業の資金繰りにおける向き不向き
- 利用前に確認したい契約上の注意点
- 公的機関による注意喚起と関連する支払いルール
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ファクタリングの基本をざっとおさらい

まず前提として、ファクタリングそのものの位置づけを押さえておきます。金融庁は、ファクタリングを次のように説明しています。
ファクタリングとは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
金融庁
つまり、借り入れではなく、債権を譲渡することで資金を準備する取引です。この共通の土台のうえに、関係者の数や通知の有無によって「2者間」「3者間」という形が分かれます。
建設業では、工事代金の入金が後ろにずれやすい構造があり、資金繰りの選択肢として話題に挙がりやすいテーマです。国土交通省の周知文書でも、下請代金の支払いは「支払を受けた日から1月以内でできる限り短期間」、特定建設業者では「完成を確認した後、引渡しの申出日から50日以内」とされており、入金前の支出が立ちやすい構造が見えてきます。
出典:国土交通省
2者間ファクタリングとは

2者間ファクタリングは、利用する事業者と買い取り側の2者の間で行う取引の形です。売掛先(工事の発注者など)には知らせずに進められることが多いとされています。
2者間の特徴をざっくり整理
- 当事者は基本的に2者
- 売掛先への通知や承諾を前提としないことが多い
- 入金後、利用事業者から買い取り側へ精算する流れが一般的
- 売掛先への影響を抑えやすい一方、買い取り側のリスクが高くなりやすい
「売掛先に知られたくない」という事情がある場合に検討されやすい仕組みです。ただし、買い取り側から見ると、回収を直接行えないぶん、リスクを織り込んだ条件設計になりやすい、という整理ができます。
2者間でよく出てくる仕組み
- 利用事業者がいったん入金を受ける
- そのうえで買い取り側へ送金して精算する
- 契約内容によっては、回収不能時の扱いがあらかじめ定められている
ここで気をつけたいのが、契約の中身です。金融庁は、次のように注意を呼びかけています。
譲渡した債権の回収(集金)がファクタリング業者から売主に委託されており、売主が集金できなかった場合に、売主が債権を買い戻すこととされている、売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている、といったケースは、貸金業に該当するおそれがあります。
金融庁
2者間という仕組み自体に問題があるという話ではなく、「契約の中身が実態として貸付けに近くなっていないか」を確かめる視点が大事、という意味で受け止めたいところです。
3者間ファクタリングとは

3者間ファクタリングは、利用する事業者、買い取り側、そして売掛先の3者が関わる形です。売掛先に対して債権譲渡の通知や承諾を行い、入金は売掛先から買い取り側へ直接送金される流れが一般的とされています。
3者間の特徴をざっくり整理
- 当事者は3者
- 売掛先への通知や承諾が前提
- 売掛先から買い取り側へ直接入金される運用が多い
- 買い取り側にとって回収リスクが下がりやすい
「売掛先の協力が得られるかどうか」が、進めやすさのカギになる仕組みです。建設業の場合、長年付き合いのある元請や発注者であれば話を通しやすいこともありますし、関係性によっては慎重に検討すべき場面もあります。ここは、相手との距離感に応じて判断したいところです。
3者間で意識しておきたいポイント
- 売掛先への説明資料や合意の取り付け
- 通知のタイミングと方法
- 譲渡禁止特約の有無
- 入金経路の変更に伴う事務調整
中小企業庁の売掛債権担保融資保証制度の案内でも、「債権譲渡禁止特約の解除」への協力が呼びかけられています。直接の制度ではありませんが、債権譲渡という考え方の周辺で押さえておくと、話の整理がしやすいです。
出典:中小企業庁
2者間と3者間を一覧で比較する
ここまでの内容を、表で並べて整理してみます。違いをひと目で確認したいときに使いやすい形です。
主な違い
| 比較項目 | 2者間ファクタリング | 3者間ファクタリング |
|---|---|---|
| 当事者 | 利用事業者と買い取り側 | 利用事業者、買い取り側、売掛先 |
| 売掛先への通知 | 行わない運用が多い | 行うのが一般的 |
| 売掛先の承諾 | 前提としないことが多い | 前提とすることが多い |
| 入金の流れ | 利用事業者が受け取り、精算 | 売掛先から買い取り側へ直接 |
| 手数料感の傾向 | 相対的に高めになりやすい | 相対的に抑えられやすい |
| スピード感の傾向 | 比較的早く進めやすい | 売掛先との調整に時間がかかりやすい |
| 売掛先への影響 | 抑えやすい | 関係性への配慮が必要 |
| 買い取り側のリスク | 相対的に高い | 相対的に低い |
数字で「何%」と言い切れる話ではないため、ここでは傾向のみ整理しています。実際の条件は契約ごとに異なるため、必ず個別に確認したいところです。
スピードと手数料はトレードオフになりやすい
- 2者間:売掛先調整が少なく、進めやすい一方で、リスクが価格に反映されやすい
- 3者間:売掛先調整が必要なため時間がかかりやすい一方で、回収経路が整いやすい
「早さ」と「条件」のどちらをどれだけ重視するかによって、向き不向きが変わってきます。
建設業ではどう考えるか
建設業の資金繰りには、入金より先に支払いが立ちやすい構造があります。材料費、外注費、労務費が先行し、入金は工事完了後にずれていく。この時間差を埋めるための選択肢として、ファクタリングの形を比較する場面が出てきます。
検討の出発点:制度面の余地を先に確認する
国土交通省の周知文書では、前払金受領時の適正な支払や、中間前金払制度の積極的な活用が示されています。中間前金払は、当初の前払金(請負代金の4割)に2割を加え、合計6割を前払いする仕組みで、要件を満たせば活用できるとされています。
出典:国土交通省
出典:関東地方整備局
ファクタリングを比較する前に、こうした制度面の余地があるかをまず確認しておくと、判断がぶれにくくなります。
2者間が話題に上がりやすい場面
- 売掛先との関係性に配慮したい
- 早めに資金を準備したい事情がある
- 売掛先への通知に伴う事務調整を避けたい
3者間が話題に上がりやすい場面
- 売掛先との関係が安定しており、話を通しやすい
- 入金経路の変更に売掛先の協力が得られる
- 売掛先への通知に大きな支障がない
表で整理:建設業での向き不向きの傾向
| 場面 | 検討されやすい形 |
|---|---|
| 元請との関係を変えたくない | 2者間が話題になりやすい |
| 元請からの理解を得やすい | 3者間が話題になりやすい |
| 急ぎで資金を整えたい | 2者間が話題になりやすい |
| 時間に余裕があり、条件を整えたい | 3者間が話題になりやすい |
| 譲渡禁止特約がある | 解除可否の確認が前提 |
「自社にとってどちらがよいか」は、案件・取引先・タイミングで変わります。固定的な答えを置かず、その都度整理する姿勢で見ていきたいテーマです。
利用前に確認したい契約上の注意点

どちらの形を選ぶにしても、契約の中身を確認する姿勢は欠かせません。金融庁の注意喚起は、次の点を挙げています。
ファクタリング業者から受け取る金銭(債権の買取代金)が、債権額に比べて著しく低額であるといったケースは、偽装ファクタリングの疑いがあります。
金融庁
加えて、ノンリコース(売却した売掛債権等が返済不能になっても売主に返済義務が生じない)の規定が形式的にあっても、経済的側面や実態に照らして判断されるとされています。
確認しておきたい代表的な項目
- 買取金額の妥当性
- 買戻し義務の有無
- 売主自身の資金で支払う前提になっていないか
- 手数料以外の費用や名目の有無
- 契約書の表現と実際の運用に乖離がないか
簡易チェック表
| 観点 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 形式 | 2者間か3者間か、契約書の名称 |
| 金額 | 買取金額・手数料・諸費用 |
| 回収 | 回収できなかった場合の扱い |
| 通知 | 売掛先への通知・承諾の有無 |
| 期日 | 精算時期と入金経路 |
| 相談 | 不明点について専門家に確認したか |
少しでも違和感がある場合は、契約を急がない姿勢で見たいところです。
支払いルールを押さえると、判断の軸がぶれにくい
ファクタリングの形を比較するときも、最終的には「いつ・いくら入る予定なのか」が判断の起点になります。公正取引委員会の下請代金支払遅延等防止法では、下請代金の支払期日は、給付を受領した日から60日以内、かつできる限り短い期間内に定める必要があるとされています。期日を定めなかった場合は受領日が支払期日とみなされ、60日を超えて定めた場合は60日を経過した日の前日が支払期日とみなされる、と整理されています。
出典:公正取引委員会
また、支払期日までに代金を支払わなかった場合、未払金額に所定の率を乗じた遅延利息の支払い義務が生じるとされています。
出典:公正取引委員会
入金見込みの「日付」と「金額」をできるだけ正確に把握しておくと、2者間と3者間のどちらの条件が、自社の状況に当てはまりやすいかが見えやすくなります。
まとめ:どちらかが優れているのではなく、自社の状況に合うかどうか
2者間ファクタリングと3者間ファクタリングは、当事者の数、売掛先への通知の有無、手数料感、スピード感など、いくつもの観点で違います。建設業で検討するときは、案件の進み方、売掛先との関係、緊急度、契約条件をひとつずつ見ながら、自社の状況に合うかどうかを判断するのが現実的です。
そして、どちらを選ぶ場合でも、契約の中身を丁寧に確認する姿勢は欠かせません。形式の違いだけで判断せず、実態を見て選ぶ。これが、現場を止めずに資金繰りを整えるための落ち着いた姿勢ではないでしょうか。
Q&A
Q1. 2者間と3者間の一番大きな違いは何ですか?
売掛先への通知や承諾の扱いと、当事者の数です。2者間は売掛先を含めない形で進められることが多く、3者間は売掛先への通知や承諾を前提にする運用が一般的です。
Q2. 手数料はどちらが抑えられやすいですか?
傾向としては3者間のほうが抑えられやすいとされます。買い取り側にとって回収経路が整いやすく、リスクが下がる傾向があるためと整理できます。ただし、実際の条件は契約ごとに異なるため、個別に確認が必要です。
Q3. スピードはどちらが早いですか?
傾向としては2者間のほうが進めやすい場面が多いです。3者間は売掛先との調整が入る分、時間がかかりやすい一方で、関係性が整っていれば落ち着いて進めやすい面もあります。
Q4. 建設業ではどちらを選ぶべきですか?
案件と取引先の状況によって変わります。元請との関係を保ちたい場面、急ぎで動きたい場面では2者間が話題になりやすく、売掛先の協力を得られる場面では3者間が話題になりやすいです。一律の答えはありません。
Q5. 契約時に気をつけることは何ですか?
買取金額の妥当性、買戻しの有無、支払原資の前提、手数料以外の費用、契約書の表現と運用の整合性を確認したいところです。金融庁は、実態として貸付けに近い取引には注意するよう呼びかけています。
出典:金融庁
Q6. ファクタリングを検討する前に確認しておきたい制度はありますか?
建設業では前払金や中間前金払の活用が候補になります。中間前金払は、当初の前払金(請負代金の4割)に2割を加え合計6割を前払いする仕組みとされており、要件を満たせば検討できます。
出典:関東地方整備局
Q7. 売掛債権の活用に関する公的な案内はありますか?
中小企業庁が、売掛債権担保融資保証制度として、国内事業者向け債権やサービス提供債権を対象にする仕組みを案内しています。債権譲渡禁止特約がある場合は対象外です。
出典:中小企業庁


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